息子の元恋人?
先日、自宅マンションのエレベーターの中で対面した母と娘の親子がいた。
その娘はうちの息子と同じくらいの年格好だ。
『こんにちわ』
母子揃って挨拶するので、俺はなんだかビミョーな感じで会釈して、挨拶を返した。
10年以上このマンションに住んでるものの、仕事ばかりで家に帰らないことがほとんどだった。顔見知りなんてまるでいない。挨拶するのにいちいち目を合わせたりもしない。無愛想でもOK。
だけど、この時はなんだか妙な空気が流れた。
1Fに降りるまでの数秒の間、俺に向けられた視線が背中に感じ、ひょっとしたら話しかけられるのではないかという、くすぐったい感覚があった。
1Fに到着してドアが開くと、それぞれ反対の方向に歩いたので結局、話しかけられることはなかった。
あー、よかった、愛想笑いとかすんの面倒くさいからね。
だけど、あの娘、どっかで見たな。まあ、長く住んでれば見たことあるに決まってんじゃんね。
ん?待て待て。
それにしても、なんか、よーく知ってる感じ。
歩きながら脳みその奥のほうをゴソゴソやっていると、途端に記憶のスイッチが入った。
あー!ひょっとして、あの娘、うちの息子の、昔の恋人じゃね?うちにしょちゅう遊びに来てた女の子じゃねーか?
いや、待て、あんなに美人だったけか?
あれは5,6年前か‥子供ってそんなに変わるのか。
そういえば、あのお母さんにも見覚えがある。
俺が撮ってあげた写真をあの女の子にあげたら、わざわざお母さんがお礼に来たことがあったけか!
間違いねー、あの娘、息子の昔の恋人だぜ!!!
同じマンションに住んでて5,6年ぶりに再会か?
とにかく、ソッコー、息子にLINE。
以下、LINE表記。
『あのさー、今、エレベーターで彼女を見た‥たぶん。お前、あの子とどうなったの?』可愛いスタンプ添えた俺。
『は?彼女? 知らねーし』なんか怒ってるみたいなスタンプ。
『あーそー、やっぱ別れちゃったんだ』さらに可愛いスタンプを追加する俺。
『は?付き合ってないし。つーか、オレ、オンナとかキョーミねーし!』
ナッシング。終了。
はいはい、俺も中三の頃は同じよーなこと言ってたわ。
これが高校行き始めるとガラリと変わるんだから。
つーか、俺は小学生の頃に女の子を家に連れて来たりしなかったけどね。
なんだか気分がよくなった俺は家に戻ったあと、早速、古いハードディスクを引っぱり出してあの女の子の写真を探した。
うおー、間違いねー。エレベーターのあの娘じゃん。
しかも、すっげぇいっぱい写真がある。写真集つくって息子にやるか。
いや、めっちゃ怒るからダメだね。
ホント、人間ってミョーなところで記憶のスイッチが入るもんだね。
写真撮ってなかったらスイッチどころじゃねーけど。
さて、この写真どーすんべか。
息子が将来、彼女とヨリを戻すかもしれないし、もうしばらく保管しておこうー♫